商品写真撮影テクニック講座
カタログやネットショップで使用する商品写真は、商品の魅力を消費者に伝えるためにはとても重要なポイントとなります。今回の技術解説では、商品写真を撮影するための基本的なテクニックと、必要な機材について解説します。
1.カメラとレンズの選択と設定
商品写真の撮影には、一眼レフカメラやミラーレス一眼等の高機能なデジタルカメラが、各種の設定に柔軟に対応できるので理想的です。
■カメラの選択
APS-Cサイズのデジタル一眼レフカメラが、リーズナブルな価格でありながら必要十分な性能を備えており、おすすめと言えます。APS-C専用の安価なレンズが充実してきているのもメリットです。
■レンズの焦点距離と絞り
レンズはズームレンズだけでなく、商品写真で自然な遠近感が演出できる明るい中望遠(35mm換算で70〜100mm程度)の単焦点レンズが一本あると表現の幅が広がります。カメラのセンサーがフルサイズの場合は70〜100mm、APS-Cサイズの場合では50〜70mm程度の開放F値が3以下の明るいレンズがおすすめです。接写が可能なマクロレンズも一本あると、商品ディテールの拡大撮影に威力を発揮します。
商品の全体像の撮影では、絞りをF10以上に大きく絞り込んで被写界深度を深くして撮影します。動かない被写体なので、シャッタースピードは遅くても問題なく、三脚とレリーズを使用して撮影します。商品の一部をクローズアップしたり、利用シーンのイメージ写真等を撮影するときは、絞りをF値3以下まで開けてボケ味を活かすと効果的です(図1)。
図1 商品の全体像とイメージ写真の例


■露出とホワイトバランス(WB)
スナップ写真の撮影では、露出(絞り値とシャッタースピード)やWBはオートの設定で困ることはほとんどありません。しかし、正確な色の再現が求められる商品写真の撮影では、商品の色の影響を受けて露出やWBの自動調整がずれるのを避けるためにマニュアルで撮影します(図2)。
図2 露出とホワイトバランスがオート撮影で不適切になった例
マニュアル設定で適正な露出とWBで撮影した画像




同じ被写体を露出・WBをオートで撮影した画像

白い被写体は光が強すぎると勘違いして暗く写ります(露出アンダー)。

黒い被写体は光が弱いと勘違いし、露出オーバーになります。

青い被写体は光が晴天の太陽光だと勘違いし、WBがずれて少し緑色がかりました。

赤い被写体は光が電球色だと勘違いし、WBがずれて青みがかるとともに、露出もオーバーしています。
露出やWBをマニュアル設定するためには、「18%標準グレー板」があると便利です(図3)。照明等のセッティングが完了したら、標準板が画面中央を占めるように撮影台に置き、絞りとシャッタースピードをカメラの露出計で最適値(プラマイゼロ)になるように合わせます。その後、そのまま標準板を撮影し、マニュアルWBの調整用画像に指定します。
■撮影品質の設定
カメラの撮影品質の設定では、出来るだけ高解像度の設定を選択します。RAWモードが選べる機種ならそれを選びます。RAWモードであれば、露出やホワイトバランスが不適切な撮影条件であっても、必要な階調を保ったまま調整できる可能性が高くなります。
表1 カメラとレンズの設定まとめ
焦点距離 | 70〜100mm(35mm換算) |
露出 | マニュアル |
しぼり | F10以上(商品全体にピントの合った写真) F3以下(ボケを活かしたイメージ写真) |
WB | マニュアル |
撮影品質 | RAW |

2.照明(ライティング)
商品写真を撮影する場合は、窓からの外光はカーテン等でしっかりと塞ぎ、十分な明るさの照明器具を使用し、安定した光環境で撮影することが大切なポイントです。
■内蔵フラッシュは使用しないこと
陰影のないのっぺりとした写真になりやすく、強い影も出てしまうので、原則カメラの内蔵フラッシュはオフにします。
■部屋の照明は消灯すること
余計な影が生じたり、撮影物に部屋の照明が映り込んだりするので、部屋の照明器具は消灯するようにします。
■基本の照明は真上から下へ照らします
日中の太陽の光と同じ方向から照らすことで、自然に感じられるハイライトと陰影が生まれます。
■光源は蛍光灯がおすすめ
大光量の電球形スパイラル蛍光灯(昼白色または昼光色、32W以上)を使用した照明器具がおすすめです。複数の照明器具を使用するときは、光源の色(色温度)は揃えるようにします。
■障子紙(ディフューザー)で光をやわらかく
照明と撮影物の間にディフューザー(拡散器)を挟むことでやわらかい陰影が生まれます。 ディフューザーには障子紙が安価で効果が高く、おすすめです(図4)。