繊維のいろは(2)-糸から布まで-
繊維とは、細くて長いものの総称で、その繊維を1本、または複数束にすることで糸になります。また、糸や繊維から作られた薄くてある程度の強さのある平板状の繊維製品を布といいます。
今号では、糸から布までと称して布の種類と作られ方、特徴について説明します。

織物

編み物

不織布

組物

レース

網

図1 三原組織

図2 織機の構成
1.織物って何?
織物は、たて糸とよこ糸と呼ばれる直交した2組の糸で構成されます。織物を作る時は、あらかじめ織物の幅分の本数の糸を等間隔に巻き取って並べておきます。
並べられたたて糸によこ糸が直角に上下に組み合わさって織物は織られますが、この時のたて糸とよこ糸の交錯は一定の規則にしたがい、これを織物組織と呼びます。
織物組織は大きく分けて
- 一重組織(三原組織、変化組織、紋組織等)
- 重ね組織
- 添毛組織(ビロード組織、タオル組織)
- からみ組織
に分類されますが、この中で最も基本的な組織は一重組織に分類される三原組織(図1)です。
■織物のつくりかた
織物を織る機械を織機といいます。ビームという円筒状の芯にたて糸を巻き取り織機に仕掛けます。たて糸は、綜絖(そうこう)と筬(おさ)に通され、綜絖を織物組織にしたがって上げ下げさせることによってできた隙間によこ糸を入れ、筬で織物に打ち込んでできます(図2)。
■織物の特徴
織物は組織を始め、原料や糸の種類や太さ、密度によって表面形態が変化し、さまざまな用途にもちいられます。また、丈夫で型崩れしにくく、毛玉ができにくいと言った特徴があります。
2.編物って何?
織物がたて、よこの2方向から糸の交差によって作られるのに対し、編物はよこ、あるいはたてのどちらか1方向の糸を使った編目(ループ)を連続させることによって構成される布です。
編物の組織は編目が基本となり、よこ方向から糸を供給してよこ方向に編目を作っていく「よこ編み」と、たて方向から糸が供給されてたて方向に編地を作っていく「たて編み」があります(図3)。よこ編み、たて編みそれぞれに織物と同じように組織があり、三原組織をはじめ、様々な変化組織があります。
■編物のつくりかた
編機では、最初に編針が上昇して糸が供給され、次に編針に糸をひっかけたまま針が下降し、すでにできあがっている前の編目をくぐり抜けて新しい編目を作ります(図4)。
■編物の特徴
編物は、ループのつながりによりできているため、変形しやすく伸縮性に富んでいます。また、織物に比べて空隙の多い、嵩高な生地になるのが特徴です。これらの特徴から、下着や靴下、防寒着に用いられることが多い一方で、引張り剛性が小さいため、複合素材の基布には向きません。

図3 編物の組織

図4 織機による網目機構

図5 スパンボンド不織布の製造工程

図6 乾式不織布の製造工程
3.不織布って何?
織物や編物が糸を用いた規則的構造物であるのに対して、不織布は繊維を直接シート状にして繊維を交絡、接着、溶着などにより結合させた布です。不織布は、フェルトの代用品として始まりましたが、今では、ファイバークッションと呼ばれる厚さが1m以上になるものから、超極細ナノファイバー不織布と呼ばれる1平方メートルあたりの重さが2gに満たない薄くて軽いものまであります。
■不織布の作り方
不織布は、繊維を厚さが均一で薄いシート(ウェブ)にし、ウェブの繊維を結合することにより作られます。ウェブの作り方によって、乾式不織布、紡糸直結型(スパンボンド、メルトブロー)不織布と短繊維を用い、製紙の原理で水媒体を用いて作る湿式不織布、およびその他に大別することができます。結合法には、化学的接着法、ニードルパンチ法、水流で繊維を絡めるスパンレース法などがあります。
スパンボンド不織布は、
- 原料チップを、合成繊維を作る際と同様に紡糸
- 延伸した繊維をコンベアーベルトに収集し、ウェブを形成
- ロール間に製品を通して圧縮する装置であるホットカレンダーで繊維間を結合、または多数の鉤のある杯でウェブを突き、繊維を絡めるニードルパンチで結合することによって製造されます。(図5)
また、乾式不織布は、
- 紡績糸を作る時と同様に、比較的短い繊維を開繊機でバラバラにほぐす
- できたシートを均一にするためにとがったワイヤで繊維を一方向に揃えるカード機で繊維シートを何層か重ねてウェブを形成
- ウェブを接着剤で浸漬し、熱で乾燥する化学的接着、またはニードルパンチで繊維間を結合することによって作られます。(図6)
■不織布の特徴
不織布は一般的に繊維がランダムに配向されていることから、繊維が自由に移動・変形しにくいため引張り初期剛性が大きく、変形しにくい特徴があります。このことから、衣料材料としては衣類の保形成を与えるために芯地に多く用いられています。
■参考文献
- はじめてまなぶ繊維 日刊工業新聞社
- 繊維の種類と加工が一番わかる 技術評論社
- 知っておきたい繊維の知識424 ダイセン株式会社
■問合せ先
繊維・高分子担当(長浜庁舎)
TEL 0749-62-1492